少子化に苦しむ少年サッカークラブの復活に向けて

卒団して約40年。私が一期生だったサッカークラブが存続の危機に立たされていたのを知った。

横浜市の人口は実質的には減っている。
TOTALでは約2,000人増だが14区ある行政区の中で増加はわずか5区。
残りの9区は大幅に人口の減少が起きている。
私の出身の港南区は、当時は新興住宅地として一世を風靡した。
横浜の中でも住みたい地域No1と言われていた時期もあった。

しかし、高齢化が一気に進み大幅減になっている。
なかでも社会減とういう転出者が多い点がとても気になる。

その結果、小学生は減り当時40名で4クラスあった小学校が20~30名程度で2クラスが精一杯である。
年度によってもぶれが大きく平気で30名くらい年度で変わる。

ここまでで想像はつくだろう。
当時からコーチは、父兄が大半だった。
なかに1~2名若いサッカー経験者のコーチが偶然の出会いからサポートをしてくれていた。
しかしそれも今ではなく、すっかり高齢化した当時からのお父さんコーチがお爺さんコーチになっていた。

そんな状態とはつゆ知らず我々同期は、久々の再会を祝して乾杯をしていた。
ひょんなことから一期生としてOB会設立の話になった。

そこから、クラブに接触してみると状況は極めて深刻だった。
横浜市内で何度か優勝した実績も今では誰も信じられない状況だ。
コーチ間の世代間のGAPや保護者との意思疎通不足、しかし何より今を凌ぐので精一杯だった。

潰すか、本気で再建するか。
どちらにしても覚悟のいる選択だった。
やるか?やらないか?その時は?
そして私は、後者を選んだ。
 

再建への道のり

再建への道のりは、決して楽でも早くもなかった。
もともとが人々の厚意で成り立っているようなクラブでもある。
コーチたちは手弁当で集まり、子どもたちを指導しているのだ。
一番はじめにするべき事は何かと考え、ビジョン・ミッションの確立が急務と感じた。
そのためには、まず運営幹部達とミーティングの席を設けなければならない。

まずは、運営幹部と接触を試みるがこの時点で乗ってこない。
未来を考えるミーティングすら開催できない状況だ。
四方に連絡を付けて接触を試み、なんとかその機会を設けるが、今度はクラブの現役会長が慶事で欠席する事態。
会長を交えたミーティングの続きを翌週に予定するが、当日にドタキャンメールが入った。
遅刻参加ながらなんとか開催するが、会長は泥酔状態で話し合いにならない。
前途多難だ……。

しかし、そこからストーリーがはじまったのだ。
もしドラをモチーフにしたリバイバルプランを実行した。
 

変化の兆し

リバイバルプランでは、ビジョン、ミッションを明確に言語化しクラブの存続目的を明らかにした。
一部の人間の目つきが明らかに変わり、動機づいているのが見て分かった。

OB会に参加をし運営に携わっている人間なのだから、愛着がない訳ではないのだ。
だが誰も『サッカークラブは誰の為にあり、どのような影響を世界に与えるのか』を考える機会を持たなかった。
ましてや言葉にして表現されることは、初めての体験だったに違いない。
自分たちの行なっていることの価値に気付いた時、人の目は力強く輝く。
それは営利団体でも、非営利団体でも変わらない。どちらも人が動かす組織だからだ。

具体的な組織編制を変化させるところまで行うと全員が色めきだった。

変われるかもしれない。
手応えを感じながら、当日のミーティングを終えた。
 

芽生えかけた変化を咲かせるには?

改善、改革には、外部の人間の継続的な支援が必要だし効果的だ。
技術やテクニックを教える以上に根気強く寄り添うことが大切。
それは我慢の連続だし、根競べだ。
内部だけではいつか諦めてしまうことも、外部の第三者と冷静なフィードバックを繰り返すことで続けていける。

このサッカークラブでも同様である。
抵抗勢力が物凄かった。
それも仕方ないのだろう、何しろ卒団後35年も放置していた立場だ。
今さらと言う人もいた。

けれど続けている限りは成功をする。
根気強く定期的なミーティングを行い、ミッションを明確にしていった。
このサッカークラブの使命は何だろうか? 何を求められているのだろうか?

ミッション(ミッションの内容はここでは秘密です)を明確にしたら、今度はビジョンや目標の設定だ。
組織を一体化するには共通の目標が必要だからだ。
しかもみんなが同意するものでなければならない。これも案外難しい。
向かうべき場所と具体的な状態を少しずつ明確にして言葉におこし、コーチやOB会に浸透させていった。

意外と忘れられがちなのだが、ミッションとビジョンは出来上がっただけではその威力は発揮できない。
きちんとその意味・内容を組織にインストールして、はじめて最大限の効果を発揮される。
その為には、一見遠回りに見えるようなインストール期間がとても大切だ。

ミッション・ビジョン・目標の3つが揃った。
この頃になると、子どもたちと接するコーチたちの姿勢が変わってくる。
それが子供たちに良い影響を与えだし同じことが起こりだすのだ。

その後、数々のミラクルが起き子供(選手)たちの活躍が始まった。
そのミラクルの一つが、23%だった勝率が80%を超えたことだ。

 

変化と定着

私の方式では、現場はすぐに変わりだす。
2か月あれば結果が見えてくる。もちろんその定着には3年くらい見るべきだ。

直ぐに良くなったものは、すぐに悪くなる。反動がある。

現在もサッカークラブでは、数々の課題の中で勝率を維持している。